eth history

イーサリアム(ETH)とイーサリアム・クラシック(ETC)の歴史

イーサリアムは今ビットコインに次いで時価総額が2位となるアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)で、仮想通貨の中でビットコインと同じように基軸通貨と見なされ、ますます注目されています。イーサリアムは将来、時価総額でビットコインを超える予想も出ています。イーサリアムは2015年に誕生してから、如何にして今日の地位にのし上がったのか、イーサリアムの歴史、またイーサリアムから誕生したイーサリアム・クラシック(ETC)を振り返ってみましょう。

イーサリアムの誕生

イーサリアムは2013年、当時ウォータールー大学の学生であったヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)により構想され、ホワイトペーパー(White Paper: A Next-Generation Smart Contract and Decentralized Application Platform)で公開されました。ヴィタリク・ブテリン以外に、 イーサリアムの共同創設者として名が挙がったギャビン・ウッド(Gavin Wood)、チャールズチャールズ・ホスキンソン(Charles Hoskinson)、アンソニー・ディ・イオリオ(Anthony Di Iorio)等は2013-2014年前後にこのプロジェクトに参加しました。

彼らはイーサリアムのプラットフォームを開発し、2014年2月にProof of Concept(PoC: 概念実証)の最初のフェーズ (PoC-1) として、プログラミング言語C++で実装されたクライアントをリリースしました。以降、順次に開発を進め、POC-9である「Olympic」を経て、2015年7月30日に最初のβ版である「Frontier」をリリースしました。このFrontierのリリースによって、イーサリアムは正式に誕生しました。

イーサリアムはそのホワイトペーパーの題目のように、イーサリアムのブロックチェーンネットワークがスマートコントラクトと分散型アプリケーション「DApp(decentralized application)」の開発・実行プラットフォームになることを目標にしています。イーサリアムは1仮想通貨だけではなく、そのプラットフォーム上にいろんなスマートコントラクトとDAppを開発・実行でき、無限な可能性が潜んでいます。

スマートコントラクト

スマートコントラクト(スマート契約)とは、ブロックチェーン上で人の手を介さずに契約を自動的に実行する仕組みのことです。その契約内容と実行条件があらかじめプログラミングされ、自動で実行され、その実行履歴はP2Pのネットワーク上でブロックチェーンに記帳されます。
仮想通貨の非中央集権性によって、サービスの管理者が存在せず、取引参加者同士の資金移動を自動処理できます。

分散型アプリケーション(DApp)

DAppはブロックチェーンを利用したサービスやゲームアプリの総称で、以下4つの特徴があります。

  1. ブロックチェーンのテクノロジーを使用し、アプリのコードがオープンソースで公開されていること
  2. アプリの中央管理者は存在せず、ネットワーク上に分散管理されていること
  3. アプリ内に価値の交換に使用するトークンを発行し、そのトークンの受け渡しの仕組みがアプリ内に実装され、自動的に実行されること
  4. 非中央集権性により、アプリのアップデートの際にネットワーク参加者が合意になるような仕組みがあること

DAppの基本概念は2009年に誕生したビットコインによりすでに確立されましたが、イーサリアムはビットコインが金融サービスを提供したこと以上に、金融以外のサービスにもDAppを利用でき、容易に多様なDAppを開発できる開発環境を提供しています。これまでに数多くのDAppがイーサリアムのプラットフォーム上で開発・運用されてきました。

現在よく耳にするNFT、DeFiなどは分散型アプリケーションDAppの具体例です。

ヴィタリック・ブリテンとは?

ロシアのモスクワ州コロナム出身のヴィタリック・ブリテンは、世間では天才だと評されています。6歳の頃カナダに移住し、そこで数学や経済学、そしてプログラミングなどを学びました。数学力が非常に高く、2012年彼が18歳の頃に情報科学の国際オリンピックで銅メダルを獲得しました。

2011年まだ高校生だった ヴィタリック・ブリテは父親からビットコインのことを聞き、ビットコインを研究するようになり、2011年9月に彼はBitcoin Magazine社の共同設立者となりました。ブリテンはBitcoin Magazine社が2014年にBTCメディアに買収されるまで記事を書き続けました。

ブリテンは2012年にコンピューターサイエンスを専攻しウォータールー大学へ進学しました。大学在学中に彼はビットコインを開発したサトシ・ナカモトに影響され、イーサリアムを考案し始めました。彼は2013年まだ19歳の時にイーサリアムのホワイトペーパーを発表し、その後開発に取り組み、次第に学業以上に時間を割くようになり、そして2014年にティール・フェローシップと呼ばれるプログラムに選ばれ、自主退学しました。

ヴィタリック・ブリテンは度々来日していたようで、2018年3月には河野太郎外務大臣と面会するなど、イーサリアムや仮想通貨の推進活動をしていました。

ブリテンは2017年にブルームバーグ社の「世界に一番影響力を与えた人物50人」のうちの1人に選ばれ、2018年にはフォーブス誌の「30アンダー30」に選ばれ、2021年に米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出されました。

イーサリアム価格の遷移

イーサリアム価格遷移図

2015年に公開された当初のイーサリアムの価格はわずか20円ほどで、2015年末までイーサリアムの価格は1ドル未満で低迷していました。

2015年11月、イーサリアムとマイクロソフトが提携しました。これをきっかけにイーサリアムは各界から注目を浴びるようになり、2016年初から1ドルを超えました。

2016年3月にはイーサリアムの2段階目に該当するアップデート「ホームステッド」が完了したことをきっかけに、イーサリアムをベースにしたDAppアプリ開発が進むと期待され、その年の3月には10ドルを超えるなど、高騰が続いていました。

その後、DAOのハッキング事件をきっかけにイーサリアムの値上がり率が落ち、2017年初までは10ドルを行ったり来たりする状態が続いていました。

2017年以降はイーサリアムにとって好材料が続いた年でした。2017年2月にEEA(Enterprise Ethereum Alliance:イーサリアム企業連合)を発足させたことで、イーサリアムの価格は再び伸び始めます。2017年3月に100ドルを超え、 2017年5月にはトヨタや三菱UFJ銀行など、日本の大企業もEEAに参加することや、2017年6月にはロシアのプーチン大統領がイーサリアムを承認したことで、イーサリアムに対する注目度が上がり、一気に価格が急上昇し、時価総額が大きく伸び、ついに時価総額ランキングにおいて2位へとランクアップ、現在の地位に至りました。

2017年末2018年初頃に、イーサリアムの価格は1000ドルも超えましたが、その後仮想通貨市場全体が暴落し、そして2年以上にも低迷が続き、イーサリアムも大きく下落、100ドルを切った場面もありました。2020年夏以降に仮想通貨市場全体が回復に連れて、イーサリアムはまた大きく上昇し、特に2021年前半に急上昇して、 仮想通貨全体の時価総額占有率は2021年初の10%から、2021年8月の19%と倍ぐらい上がりました。同じ時期にビットコインの時価総額占有率は73%から44%に下がり、このトレンドでイーサリアムの時価総額は将来ビットコインを超えると言う予想が相次ぎました。

イーサリアム・クラシックの誕生

イーサリアム・クラシックは2016年、分散型自律組織(DAO)として知られるプロジェクトが6000万ドル(約360万枚のイーサ)のハッキングを受けたことがきっかけで、イーサリアム(ETH)のメインブロックチェーンからハードフォークで生まれました。

DAOが発行したトークンはSplitと呼ばれる機能によってイーサリアムに交換できるのですが、ハッカーが作成したアドレスに資金移動する指示を出してから28日経過しなければ、一切引き出せないルールになっていたのです。

この28日の猶予期間にどのような手を打つべきか、イーサリアムの開発に携わっていた人たちの間で協議が行われました。

協議の結果、イーサリアムのコミュニティはほぼ満場一致で、匿名のハッカーによって盗まれた資金を本来の所有者に戻すために悪意のある取引をブロックチェーン上に元に戻すハードフォークを行うと決めました。このハードフォークで、DAOトークン保有者にイーサリアム(ETH)を返還することができました。

ハードフォークの提案は、ネットワークの取引履歴を完全に巻き戻すではなく、DAOに関連したイーサを、元の所有者に引き出させるように、新しく作成されたスマート契約に移転しました。

DAOトークン保有者は、約1ETHから100DAOのレートでETHを取り戻すことができます。ハードフォークの結果として余分に残ったトークンとイーサは、DAO管理者はDAO組織に「フェイルセーフ保護」という名目で配布しました。

しかし、取引を元に戻すことは、イーサリアムの非中央集権の基本理念の1つである「コードは法律である(Code is Law)」に反するものと考えるコミュニティのメンバーもいました。彼らは、損失を受け入れ、ハードフォークの新バージョンのソフトウェアにアップグレードせず、ハッカーが利用したプログラム実装上のミスを修正し、ハッキングを受けたブロックチェーンをオリジナルだと継続し、結果としてはハッキングの取引を戻したイーサリアム(ETH)から分岐し、イーサリアム・クラシック(ETC)が新種の仮想通貨として誕生しました。

イーサリアム・クラシック価格の遷移

イーサリアム・クラシック価格遷移図

イーサリアム・クラシック (ETC)の価格は、2016年7月に誕生した時$2.08でした。2016年11月までに最安値の0.75ドルまで下落しました。その後、上昇傾向に転じ、2017年にさらに加速し、2017年12月までに46ドルに達しました。その後、仮想通貨市場全体の暴落で、2018年12月までに価格が3.76ドルまでに下がりました。

価格の下落でイーサリアム・クラシックのマイニング活動も減少するに連れて、攻撃に対してより脆弱になりました。2019年1月には、51%攻撃でCoinbase仮想通貨取引所で100万ドル相当のETCが2重支出という被害がありました。 51%攻撃は1個人または1集団がネットワークのマイニングパワー少なくとも51%を所有している場合にのみ発生します。この事件でコインベースと他のいくつかの取引所はETC取引を一時停止し、それを受けて価格は下落しました。

2019年1月の51%攻撃の直後、ETCの価格は低迷していましたが、その後徐々に回復し、6月までに9.33ドルまで着実に上昇し、2019年末には3.54ドルに戻りました。価格は2020年2月に12.34ドルに上昇し、2018年以来の高水準となりましたが、仮想通貨市場全体の広範な売りで、2020年3月に価格が4.51ドルに下落し、2020年末まで4ドル〜6ドルの範囲で取引されていました。2020年7-8月にイーサリアム・クラシックはまた複数回の 51%攻撃に遭いました。

2021年初から仮想通貨市場全体の上昇とイーサリアム・クラシックブロックチェーンの新たな開発活動によって、ETCの価格は急激に上昇しました。Core-Gethプロトコルプロバイダによる緊急アップグレードと、イーサリアム・クラシックのフルクライアントとウォレットであるMantisの開発プロジェクトの再開により、ブロックチェーンの安定性に対する信頼が高まりました。4月26日、NOWPayments暗号化決済ゲートウェイはETCを追加し、開発者はイーサリアム・クラシックで非Fungibleトークン(NFT)の立ち上げを始めました。それを好感して、5月6日に史上最高の177ドルに上昇しましたが、5月中旬から仮想通貨市場全体の下落に連れて、30ドル台まで下がった場面もありました。8月頃は70ドル前後で推移しています。

2021年7月末時点、 イーサリアム・クラシックは時価総額ランキング18位と上位につけています。

イーサリアム・クラシックの進化

イーサリアム・クラシックの公式開発チームはありませんが、オープンソースコードの更新にIOHK、ETC Cooperative、ETCラボなど複数の開発グループが取り組んでいます。これらのチームは、主にスケーリングソリューションの提供に重点を置いています。同時に、他のプロジェクトもイーサリアム・クラシックの上に構築できるように、開発ツールを改善し、クロスチェーン取引を促進することも彼らの優先事項です。

イーサリアム・クラシックは2016年に誕生して以来、その複数のチームの開発によって、いくつかの重要なハードフォークが行われました。

2017年12月11日、ゴッサム(Gotham)ハードフォークアップグレードによって、イーサリアムクラシックの総供給は、イーサリアム・クラシック改善提案ECIP-1017の実装で最大210,700,000ETCと変更されました。これはイーサリアム・クラシックをビットコインのようにデフレ資産にする目的でした。「5M20」とも呼ばれる発行スケジュールは、ブロックマイニング報酬を5,000,000ブロックごとに20%削減します。

「 5M20」スケジュールはビットコインの「半減期」に相当、それが近づくと価格が大きく動く可能性が考えられます。

発生した/予想日付5M20時代ブロック報酬/ブロック総発行済量
2015年7月30日時代11ETC 5ETC 25,000,000
2017年12月11日時代25,000,001ETC 4ETC 20,000,000
2017年3月17日時代310,000,001ETC 3.2ETC 16,000,000
2022年4月時代415,000,001ETC 2.56ETC 12,800,000
2024年5月時代520,000,001ETC 2.048ETC 10,240,000

2020年5月、ETCはPhoenix(フェニックス)」アップグレードによって、ETHと完全な互換性を持たせています。今後もイーサリアム2.0で行われるアップデートが、イーサリアム・クラシックにも実装されます。しかし、イーサリアム・クラシックはイーサリアムが採用する予定のPoSに変換する予定はありません。

イーサリアム・クラシックはイーサリアムと同じように、スマート・コントラクト・ネットワークとして動作し、分散型アプリケーション (DApp) をホストできます。

イーサリアムクラシックは2020年11月にアップグレード「Thanos」によって、ハッシュレートを上げることで51%攻撃への防御力を強化しました。

2019/2020年に複数回の攻撃に遭ったことをきっかけに、チャールズ・ホスキンソンによって設立されたブロックチェーン・インフラストラクチャ調査およびエンジニアリング会社IOHKは、Mantisのアップグレードを展開し、2020年12月9日にバージョン3.2.1をリリースし、プロジェクト再開を発表しました。「Mantis」は2017年に開発したイーサリアム・クラシックのフルクライアントとウォレットで、今回のプロジェクト再起動でMantisはETCの「コードは法律」の原則とセキュリティ、スケーラビリティ、ガバナンスの革新を組み合わせて51%攻撃を防御し、プラットフォーム上将来の開発に資金を供給する仕組みを提案しています。

2021年7月23日に「Magneto」ハードフォークが行われ、このハードフォークにはイーサリアムの大型アップデートであるベルリンで実装された4つのイーサリアム改善提案(EIP)が含まれています。

今回のハードフォークによって、アドレスと秘密鍵を一箇所に保管し、ユーザーが一度の取引でアクセスできるようにすることで取引量を減らすることによって、ネットワークのセキュリティ向上とガス代(手数料)削減につながることが期待されます。

イーサリアム・ゼロの誕生

2017年7月にイーサリアムがまた盗難事件に遭いました。ハッカーはParity Technologiesが提供していたウォレットの脆弱性を利用して、15万3,000ETH(当時のレートで約34億円)を盗みました。被害の拡大を防ぐために、93万ETHがロックされ、送金や取引が一時停止となりました。

それがきっかけに、2018年1月、ハードフォークが実施されてイーサリアム・ゼロ(ETZ)が新たに誕生しました。イーサリアム・クラシック以来の分裂で大いに話題を集め、イーサリアムの価格が急騰する場面もありました。

イーサリアム・ゼロは基本的にイーサリアムを元に生まれた仮想通貨ですが、イーサリアムとの違いはいくつも挙げられます。

・ブロック生成速度が10秒、イーサリアムより5秒も短縮、 トランザクション(取引)の承認が早い
・リプレイプロテクション搭載
・送金手数料が無料

イーサリアム・ゼロは誕生時に大いに注目され、 イーサリアムから分裂直後に約500円の値段も付けていましたが、その後下落する一方で、今0.2円前後で取引されて、すでに消滅寸前の状態です。

イーサリアムのロードマップ

イーサリアムは誕生時にもすでに4つの段階で進化するロードマップが計画されていました。それはソフトウェアのアップグレード(ハードフォーク)で徐々に実現していく予定です。

第一段階がフロンティア(Frontier)という名称で、2015年7月にこのバージョンのリリースでイーサリアムが正式に誕生しました。

第二段階がホームステッド(Homestead)、フロンティアに対する改善案を実装し安定化させ、2016年3月にリリースされました。

第三段階がメトロポリス(Metropolis)で、以下のように複数回のハードフォークによって完成しました。

  • 2017年10月にByzantiumというコードネームで、スマートコントラクトやその実行環境EVM(Ethereum Virtual Machine)の改善が行われました。
  • 2019年2月にConstantinopleというコードネームで、ネットワークの効率化を目的としてリリースされ、その後Constantinopleの脆弱性を修正するPetersburgもリリーされました。
  • 2019年12月にセレニティ(Serenity)への布石として、Istanbulがリリースされました。
  • 2020年1月にMuir Glacier(ミュアー・グレイシャー)ハードフォークで、ディフィカルティ・ボムの調整が行われました。

ディフィカルティ・ボムとは

イーサリアムのディフィカルティ・ボム(Difficulty Bomb)とは、2015年9月に追加されたイーサリアムネットワークのアルゴリズムであり、特定のブロックからネットワークのハッシュレートが増加しない場合ディフィカルティ(発掘難易度)が調整されブロック生成時間が次第に遅くなり、指数関数的に増加していきます。

これは現在のコンセンサスアルゴリズムであるProof of Work (PoW)からProof of Stake (PoS)にハードフォークする際、既存のPoWチェーン上難易度が劇的に増加することによって、全てのマイナーが新しいPoSチェーンに移行することを目的に実装されたものです。

第四段階がセレニティ(Serenity)で、イーサリアム2.0(Ethereum2.0/Eth2)とも呼ばれ、イーサリアムブロックチェーンを作業証明(PoW)プロトコルからステーク証明(PoS)ブロックチェーンに移行することによって、取引処理能力を高め、ガス(手数料)料金を削減し、ネットワークを簡単にスケーリングし、新しいコインを生成する際のトランザクション検証を環境に優しくなる様に電力消費を削減できます。

イーサリアム1.0の問題点

イーサリアムの普及と成長によって、いくつかも問題点も露呈しています。イーサリアム2.0はそれを解決しようとしています。

高騰するガス代

イーサリアムのガス代(イーサリアム・ブロックチェーン上の取引手数料)は、 オークション入札制を採用しています。

トランザクションを送信する際、送信者は自らが支払いを望む上限額(ガスリミット)を「入札」します。マイナーは取引に設定されているガスリミットで自分にとって最大の報酬になるように次のブロックに含める取引を選択できます。

このオークション形式により、送信者が設定したガスリミットは取引に優先順位をつけることになります。結果的には、迅速な処理が必要な取引には高い手数料を、時間的な制約がない取引には低い手数料を支払うことになります。実際には料金が高すぎて払えない人が出たり、重要な取引が遅らされたりしています。

イーサリアムの爆発的な成長により、ガス代は、他の仮想通貨や、スマートコントラクトに対応しているチェーンの取引手数料よりも高くなりました。2020〜2021年にイーサリアムの分散型金融(DeFi)エコシステムが爆発的に成長したことで、ガス代が高騰した問題はさらにイーサリアムの痛点となりました。

実際に、イーサリアムのガス代がピークに達したときには、他のスマートコントラクト対応のブロックチェーンに人気が集まりました。取引ごとの手数料がわずか数セントのBinanceスマートチェーン(BSC)では、1日の取引件数がイーサリアムの件数を一時に600%以上も上回りました。

イーサリアム2.0へ移行するまで、イーサリアムのブロックチェーン上でガス代高騰に対応するため、xDai(イーサリアムの レイヤー2 チェーン)をはじめとする多くのソリューションが開発されました。

レイヤー2とは

レイヤー2(セカンドレイヤー)とは、メインのブロックチェーン(レイヤー1)外部で取引を実行し、まとめた取引記録だけをメインのブロックチェーンに入れ込む技術のことを言います。
メインのブロックチェーン上で処理を行わないために、ブロックチェーン本体のシステムの処理に負荷がかからず、高速な処理ができることでスケーラビリティ問題を解決できます。

このように、ブロックチェーン外部で取引を行うことを「オフチェーン」と呼びます。一方で、メインチェーンであるブロックチェーン上で処理することを「オンチェーン」と言います。

またオーキッドは、マルチチェーン機能を追加することにより問題に対処し、サービス利用に必要な初期費用を1ドル程度に抑えました。

オーキッドとは

オーキッド(Orchid: OXT)とはイーサリアム上で動作する分散システムを使用することで、政府や権力者からの検閲を避け、インターネット上で匿名かつ安全な通信を実現することを目的としたプロジェクト、及びそのプロジェクト内で使われるトークンの名称です。

スケーラビリティ問題

イーサリアムの取引コストの高さは、「スケーラビリティ」問題とも密接に関係しています。

イーサリアム1.0ネットワークでは、1秒間に約10~15件の取引を処理できます。取引量が多いときには、取引承認まで必要な時間が長くなり、イーサリアムの手数料はオークション形式によって高騰します。

イーサリアム1.0からイーサリアム2.0への移行が完了するまで、オーキッドの「確率的ナノペイメント」と呼ばれる独自のレイヤー2システムは、イーサリアム本体よりも高い取引量を処理することができます。

イーサリアム2.0

イーサリアムの開発者コミュニティは、イーサリアム1.0の高いガス代を軽減するためにいくつかの改善提案を承認し、イーサリアム2.0に実装していきます。さらに、高い取引コストと遅い取引速度の両方を同時に改善できる「シャーディング」という仕組みを設計しました。

シャーディングとはイーサリアムのインフラをより小さな断片に分割することによって、個々のノードの負荷が減り、取引の処理速度が速くなります。イーサリアム2.0への移行によって、取引手数料がどれだけ削減されるかを正確に予測することは困難ですが、イーサリアム2.0では1秒間に10万件以上の取引が可能になると推定されています。シャーディング機能の運用開始は2023年に予定されています。

イーサリアム2.0ではPoSブロックチェーンへの移行も予定され、それがイーサリアム誕生以来最大の更新となります。

イーサリアム2.0はイーサリアムを大きく変身する壮大なプロジェクトで、何年も掛けて3つのフェーズで徐々に実現していく予定です。

  • 「フェーズ0」は、2020年12月1日に開始され、PoSブロックチェーンの準備として、現在のイーサリアム1.0ブロックチェーンとは別に、ビーコンチェーンというステーク証明(PoS)ブロックチェーンを作成しました。そのビーコンチェーンはイーサリアム2.0において、中心的な調整とコンセンサスハブとして機能します。
  • 「フェーズ1」は、シャードチェーン(Shard Chain)を作成し、ビーコンチェーンに接続します。
  • 「フェーズ2」は、現在のイーサリアム1.0(Eth1)チェーンをイーサリアム2.0(ETH2)の1つのシャードチェーンとして変身し、ビーコンチェーンに接続することによって、イーサリアム2.0への移行が実現します。

計画は壮大で、これまでに計画が二転三転していることからも、完成への道のりは容易ではないことが予想されますが、ビットコインに次ぐ時価総額を誇り、スマートコントラクトとDAppのプラットフォームとしての地位を築いてきたイーサリアムが、今後どのような分散性とパフォーマンスに優れた新しいプラットフォームに変身するか注目が集まります。

2021年にイーサリアム2.0に向けてのアップグレードはベルリンとロンドン、上海の3都市から名前を取った3ステップで計画されています。

ベルリンハードフォークは、4月15日にブロック数が12,244,000に到達した時に行われました。より大きなロンドンのハードフォークの先駆けであり、ガス代(取引手数料)の削減や、新しい取引ソーティングを可能にする4つのイーサリアム改善提案(EIP: Ethereum Improvement Proposals)を組み込んでいます。

ロンドンハードフォークは、イーサリアムネットワークをセレニティに近づけるアップグレードの1つで、8月5日にブロック数が12,965,000に到達した時に行われました。5つのイーサリアム改善提案(EIP)が含まれており、中で最も注目すべき EIP は、EIP-1559とEIP-3554です。

EIP-1559は、イーサリアムに新しいマイニング報酬仕組を導入、マイナーへの報酬を減らして、イーサリアムがデフレ資産になる効果が期待されます。

この提案では、基本手数料(Base Fee)、そして取引を速く処理されたい場合に支払う追加手数料(Inclusion Fee)からなる2つの新料金体系が導入されます。基本手数料は、取引を実行するための最低コストで、追加手数料は迅速な処理を望む場合に支払う追加分として、マイナーへの報酬となります。基本手数料は需要に応じて変動しますが、規定の水準に収まるようにプロトコルで設定されています。そして追加手数料は報酬として全て、マイナーに支払われますが、この際、基本手数料がバーン(Burn : 焼却)されるようになっています。

バーンとは

仮想通貨のバーンとは、一部の仮想通貨を誰にも管理できないウォレットに送金し、ウオレットの秘密鍵を誰にもわからない状態にすることで、その仮想通貨を永久に取り出せないようになり、事実上消滅します。これは株式の「自社株買い」に近い供給量を減らす仕組みで、企業は発行している株式を自分たちのお金で買い戻し、市場に流通する株数が減少することで一株あたりの価値が向上します。仮想通貨をバーンすることで、需要に対して供給が減少し、流通している仮想通貨一枚あたりの価値が高まることになります。

イーサリアムはビットコイン(BTC)と異なり、最大発行総数があらかじて定められていないため、これまではインフレ資産としての側面が強かったが、基本手数料をバーン( 焼却 )することで、デフレ資産性を持つようになりました。

ロンドンハードフォーク後の一ヶ月以内、イーサリアムのマイニングによる新規発行率が誕生して以来初めてビットコインを下回ったことが観測されました。イーサリアム1日新規発行枚数は固定ではなく、変動するもので、少ない時は1日新規発行枚数が3574ETHという低い数字を観測され、年率換算で1.11%で、ビットコインの年率1.75%(1日新規発行枚数が固定の900BTCで換算)より低いです。イーサリアムはこれからビットコイン以上のデフレ資産になる可能性があり、価格の上昇が期待されます。

EIP-3554はイーサリアム採掘に段階的な報酬発行を導入し、それによってマイナー達はPoWブロックチェーンより新しいPoSブロックチェーンに移行するモチベーションを与えます。

アロウグレイシャ(Arrow Glacier)ハードフォークはEIP-4345だけを実装した小型アップデートで、「2021年12月1日をターゲットとしたディフィカルティボムの発動を2022年6月まで延期する」という変更です。Eth1.0とEth2.0を統合する超大型アップデート「The Merge」の実装が2022年後半まで延期されるため、ディフィカルティボムの発動も延期する必要になります。このハードフォークはブロック数が13773000に達した時点(2021年12月8日)で実施されます。

上海ハードフォークはイーサリアム1.0(Eth1)からイーサリアム2.0(Eth2)へマージする方向に重要なステップで、2021年末に予定されていましたが、後述のイーサリアム2.0新しいロードマップの発表で、内容が変更され、延期されました。

アルタイル(Altair)アップグレード

2020年12月にPoSチェーンとなるビーコンチェーンが実装された後に、ステークされる資産の量は着実に増え続けています。

そのビーコンチェーンの初のアップグレードとなる「アルタイル(Altair)」のメインネット実装日はエポック番号が74240で2021年10月27日に決まりました。軽量クライアントに向けた準備や、バリデータ(validator)のペナルティの変更などの変更点が入る予定です。

ペナルティ(懲罰)については、報酬体系において悪意のある攻撃に対する措置として実装されているスラッシュ、非アクティブなどによるペナルティなどが設けられています。Altairでは、バリデータのインセンティブにおけるいくつかの問題が修正され、改善案EIP-2982による懲罰的パラメータが導入される予定です。

EIP-2982では、PoSが経済的で安全であることを保証するためにインアクティビティ・リーク(Inactivity leak)と スラッシング(slashing)という「懲罰的パラメータ」を導入するという提案です。
インアクティビティ・リークとはバリデータがオフライン状態が続く場合に行われるペナルティで、これを設けることで常にバリデータがオンライン状態となるインセンティブを与えます。スラッシングとは、チェーンの複数の提案されたバージョンに署名するバリデーターを罰し、「Nothing at Stake」の問題を解決します。

イーサリアムのPoS化

ステーキングとは

ステーキングとは、一定量の仮想通貨を所定の期間、ネットワークに預け入れることで報酬が得られる仕組み。

PoS(プルーフオブステーク)とは

PoSとは、ステーキングする仮想通貨の割合に応じて、ブロックを新たに承認・生成する権利が得られるコンセンサスアルゴリズムのこと。

PoSでは、PoWブロックチェーンのような複雑な数学的問題を解決する必要がないので、電力消費が大幅に低下します。このため、新しいブロックチェーン(仮想通貨)の多くはPoSを採用しています。

PoSブロックチェーンは、環境に優しいですが、PoWと比べスケーラビリティや安全性の欠如など複数の欠点もあります。一方、PoWベースのブロックチェーンは将来改善・改良によって、電力消費量が軽減する事が期待されています。

2021年5月にイーサリアム財団が発表したレポートによると、ETH2.0移行後の消費電力は既存のイーサリアム・ネットワークに比べ99%以上削減できるという概算が出ていました。

イーサリアムがPoSに完全移行すると、取引データを記帳するブロックは、マイナーではなく「ステーカー」によって承認されるようになります。ステーカーは、イーサリアムのエコシステム上に最低でも32ETHを投入することによって、取引データ検証のために無作為に選ばれます。ブロック検証の報酬として、新たなETHが作成され、ステーカーに配布されます。

イーサリアム2.0の新しいロードマップ

2021年4月2日に行われたイーサリアム全コアデベロッパー会議109では、上海ハードフォーク予定が延期されました。その後2021年12月に、ヴィタリック氏は新しいロードマップを公開しました。これからイーサリアムの進化ロードマップを以下の5つの段階で行うと計画しています。これら5つのステップは全て並行して同時に開発が進められていますが、The Mergeが最も早く実行される予定です。Splurgeまで完了するには6年かかると予想されます。

The Merge:PoS(Proof-of-Stake)への移行(2022年9月15日)
The Surge:シャーディングの実装によるスケーラビリティの向上(2023年第1四半期)
The Verge:データ保存方法をMerkleツリーからVerkleツリーに移行することにより、匿名性を向上し、トランザクション検証方法を効率化
The Purge:チェーン上の古いデータを「消去」することにより、軽量化により分散化を促進。
The Splurge:その他アップグレードの完了に必要な雑務

「The Merge」の延期により、難易度爆弾(ディフィカルティボム)の発動を遅らせる必要があります。2022年6月20日、「グレイ・グレーシャー(Gray Glacier)」アップグレードはイーサリアムのメインネットにおけるブロック高#15,050,00にて実装完了しました。今回のアップグレードにより、難易度爆弾の発動が100日相当(70万ブロック)順延となりました。難易度爆弾はPoSの実装遅れにより、すでに過去5回延期されてきました。

「The Merge(マージ)」は、現在のメインネットと今後コンセンサス形成を担っていく「ビーコンチェーン」を統合します。マージ後、トランザクションやスマートコントラクトの実行機能はメインネット(「エクセキューションレイヤー」と呼ぶ)がそのまま受け継ぎつつ、PoSによるコンセンサス形成がビーコンチェーン(「コンセンサスレイヤー」と呼ぶ)で行われるようになります。

「マージ」は「Bellatrix(ベラトリックス)」と「Paris(パリ)」という2段階のアップグレードで行われます。

第1段階「Bellatrix」アップグレードは2022年9月6日に日本時間夜20:34:47にビーコンチェーン上に実施され、マージ向けたプロセスを稼働させました。
第2段階「Paris」は9月15日午後3時頃にメインネットで実行され、イーサリアムのネットワークをPoWからPoSに切り替えました。

2021年後半に予定されていた上海ハードフォークは新しいロードマップで、「マージ」アップグレード後の2023年初になると予想されます。上海ハードフォーは3つの変更が予定されています。

  • 改善案EIP-3540によりEVMオブジェクトフォーマットが導入されます。
  • ステーキングされたイーサリアムを出金できるようになります。現在ステーキングされたイーサリアムを引き出すことはできません。
  • イーサリアムの高いガス代を効果的に下げます。

「ETH1.0」と「ETH2.0」名称廃止

イーサリアム財団は2022年1月25日、「ETH1」と「ETH2」の名称廃止を発表しました。代わりにETH1を「実行レイヤー」、ETH2を「合意レイヤー」と呼ぶことにしました。

名称変更の理由としては、

  • ETH1.0が実行レイヤーとして必要不可欠なチェーンであり続けるため、ETH2が現れるとETH1が存在しなくなるという誤解を防ぐこと
  • 「ETH2」という仮想通貨が存在しないにも関わらず、「ETH2」が存在するという誤解、またそれを利用する詐欺を防ぐためこと

イーサリアムのハードフォークによる価格への影響

イーサリアムはロードマップで計画された複数のハードフォーク(アップグレード)を経ることで、次第に優秀な仮想通貨へと進化していきます。そのため、イーサリアムのハードフォークは投資家から好意的に受け止められており、好材料だと判断されています。

イーサリアムは過去にハードフォークアップデートが行われる度に、価格が倍に上昇した実績があります。

例えば、2016年にホームステッドが完了した際には、イーサリアムの価格が倍以上へ値上がりし、上昇トレンドの形成に一役買いました。

2017年10月にビザンチウムが実装された際には、当時3万円代だったイーサリアムの価格を押し上げ、12月には15万円以上という高値を付けさせることに成功しました。

イーサリアム2.0はいくつかのハードフォークを経って、実現されていきます。イーサリアムは完全にイーサリアム2.0に移行すると、取引処理スピードや処理能力が劇的に向上すると同時に、取引手数料(ガス代)が格段に低減すると予想されます。それは大きな障害を起こさず、設計通りに実現すれば、イーサリアムの価格が大きく上昇すると容易に予想され、時価総額でビットコインを超える日が早く来るかもしれません。



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