Satoshi Nakamoto

サトシ・ナカモトは誰だ?


サトシ・ナカモト探し



サトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)は、仮想通貨の先駆となるビットコインの発明者が使用した名前で、おそらく本名ではなく、一個人か或いは何人によるグループの偽名であると推測されています。

ビットコインは2009年に誕生して以来、世界中からサトシ・ナカモトを探す試みが続いていますが、いまだに正体不明のままです。今まで何人かの人々は“自分がサトシである“と主張しましたが、いずれもサトシ本人だと証明されていません。

サトシ・ナカモトは日本人らしい名前ですけど、彼の英語が流暢な上、ビットコインに関する論文がネイティブな英語で書かれているため、おそらく日本人ではないと思う人も多いようです。日本人に親しい名前にしたのは、ビットコインの普及には多くの日本人の参加が重要であるとビットコインの発明者が思っていたかもしれません。実際にこの名前が使われたのは英文にしかなくて、公式に漢字がありません。一部の日本人は勝手に「中本哲史」という漢字表記にしていました。

サトシ・ナカモトがどこに住んでいたか、一個人かそれでも何人かによるグループかについて、いろんな推測があ飛び交う中、スイスのプログラマーでビットコインコミュニティにおける活発なメンバーでもあるステファン・トーマスは、ある興味深い分析をしていました。

彼はビットコインのフォーラムにあるサトシの投稿(その数は500件以上にものぼる)を集め、投稿した時間帯を分析した結果、日本時間で14時から20時のあいだ、ほぼ投稿がないことが分かりました。土曜日や日曜日でもこのパターンは当てはまっており、つまりこの時間帯はサトシの睡眠時間ではないかと推測できます。これによって、彼が住んでいるのはおおよそ北米の東部標準時や中部標準時の地域になります。この情報はナカモトが一個人である可能性も示唆しています。もし複数の人のグループなら、睡眠時間帯がもっとばらつきになるはずでしょう。


2008年: ビットコインの論文発表


サトシ・ナカモトが2008年10月31日にビットコインの基礎となる画期的な論文「ビットコイン:P2P電子通貨システム」(英文名:Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System)を発表しました。この論文では、デジタル通貨の二重使いという問題の解決策としてP2P(ピア・ツー・ピア)ネットワークを使用することが提案されています。2重使い問題とは、デジタル通貨は物理的に存在しないため、あるトランザクションで使用されても、必ずしも誰かの所有物から削除される保証がありません。このような重複使用という問題は物理的に実在する紙幣または硬貨には、その性質上、一度に1つの場所にしか存在できないため、あり得ません。

二重使いの問題に対処するための解決策は、これまでデジタル通貨がその所有者によってすでに使用されているかどうかを検証する信頼できる第三者の仲介役が必要となっていました。ほとんどの場合、銀行などの第三者経由で、大きなリスクを負わなくても、トランザクションを有効に処理できます。

ただし、この信頼に基づいたモデルでは、信頼できる第三者が実際に信頼できない場合では、不正のリスクが発生します。この第三者の介在を避けるために、トランザクションを暗号化することによって有効処理が可能になります。

サトシは、トランザクションへの分散型アプローチを提案し、最終的にはブロックチェーンの作成に至りました。ブロックチェーンでは、トランザクションのタイムスタンプがプルーフ・オブ・ワークに基づいて以前のタイムスタンプの最後に追加され、変更できない取引履歴記録が作成されます。

トランザクションの記録はネットワーク上に多くのノードに分散されているため、悪意のある攻撃者がシステムを十分に制御して元帳を自分の利益に書き換えることは困難あるいはほぼ不可能です。ブロックチェーンに暗号化された記録は、それらを元に戻すために小規模な攻撃を断念させられるほど膨大の計算量が必要で、安全に保たれます。

この論文は参考文献ページを除いて、本文が8ページに書かれいます。ある程度数学とITの知識を持っていれば、実は分かりやすく読めます。世の中に沢山の博士論文は普通最低でも30-40ページ以上が必要な上、その後多くの論文がただの紙くずになり、人類の歴史を変える画期的な8ページの論文と比べて、いかに量より質だと感心します。

豆知識:英文Bitcoinとbitcoinの違い
慣例では、ビットコインのシステム、ネットワーク、プロトコルなどを参照するときは、大文字の「B」が付いたビットコイン(英文Bitcoin)を使用することになります。取引所でビットコイントークンまたは取引単位を参照する場合は、小さな「b」が付いたビットコイン(bitcoin)を使用することになります。

2009年: ビットコインのブロックの初生成とマイニングソフトの初公開


サトシ・ナカモトはビットコインの論文発表前後の2008年~2009年にビットコインのマイニングソフトの開発に取り組んでいました。彼が2009年1月3日にそのマイニングソフトをテスト的に使用し、ビットコイン初のブロック(ブロック0:ジェネシスブロック(Genesis Block)とも呼ばれています)を作成しました。これよって、彼は世界で初めてビットコインをマイニングした人となり、最初のマイニング報酬として50BTCがサトシのビットコインアドレスへ入金されました。このブロックの中身は、特定のブロックやトランザクションを閲覧できるサービスを通じて確認が可能です。

そして2009年1月8日にサトシが世界最初のビットコインのマイニングソフト(Ver0.1)をリリースしました。

なおサトシは、ビットコインを他人へ送金した第一人者でもあります。彼が後述のハル・フィニーに世界最初のビットコイン送金をしたのです。

ビットコインが誕生してから最初の数ヵ月は、ハッシュパワー(マイニングに必要な演算能力)のほとんどは、サトシが提供していたと考えられます。しかし、P2Pの電子マネーを成功させるためには、他マイナーの参加が欠かせないため、サトシはそれを待っていました。その後、世界中から徐々にマイニングに参加する個人や企業が増え、ビットコインが全世界に広がりました。


2010年:サトシがビットコインの活動から引退


サトシ・ナカモトは、2010年の中頃までは積極的にビットコインの開発に関わっていました。しかしその後、徐々にビットコイン開発やプロジェクト管理を他の開発者に任せるようになっていきます。ソースコードの管理やプロジェクト管理は、初期からビットコイン開発に参加していたギャヴィン・アンドレセン(Gavin Andresen)氏に委ね、サトシ・ナカモトが所有していたビットコインのWEBサイト「bitcoin.org」のドメイン管理も、コミュニティに初期から参加していたメンバーに引き渡されました。

サトシとの最後のやり取りは、別の暗号開発者に「他のことに移った」というメールでした。そして、サトシ・ナカモトは2010年12月12日、ビットコインフォーラムに最新版(ver0.3.19)のマイニングソフトの告知を投稿した後、一切消息を絶ち、姿を消しています。

その後ビットコインのマイニングによる発行数、世界中の取引量、人気度、および一部の人からの悪評が増加したことに連れて、サトシ・ナカモトの正体に関する憶測がますます高まっています。

サトシは自分の正体を推測されるない様気を掛け、おそらくビットコインを創出することによって将来には法定通貨の脅威になり、またビットコインが違法と断定された場合、自分が責任を取らなければならないと心配していたかもしれません。自分の正体が推測されないうちに、早めに身を引くことにしたでしょうか。


ビットコインソフトの開発者による証言


ギャヴィン・アンドレセン(Andresen)氏は、2010年6月から2011年4月まで、ビットコインの開発に参加し、サトシと密に協力し、その後、サトシがビットコイン活動から引退した時に、ソースコードの管理やプロジェクト管理に委ねられました。

アンドレセンはその1年近くの間、サトシと週に数回連絡を取り、ビットコインコードを改良するために週に40時間かかることがよくありました。

早期にソフトウェアの開発に参加した開発者たちはサトシとのやり取りが全部電子的に行われました。サトシは電話で他の開発者と連絡をとらないため、アンドレセンでさえサトシの声を聞いたことがありませんでした。彼らの交流は常にビットコインの愛好家がオンラインで集まる「Bitcointalk」というフォーラムの電子メールまたはプライベートメッセージによって行われていました。

「当時、ビットコインを作成することが合法であるかどうかは明らかではありませんでした。彼は自分の匿名性を保護するために多大な努力を払いました。」

サトシは彼がどこから来たのか、彼の専門的経歴、彼が取り組んだ他のプロジェクト、そして彼の名前が本物か仮名かについてのアンドレセンの質問をすべて無視しました。 「彼は決しておしゃべりではなかった、私たちが話し合ったのはソフトのコードのことだけでした。」

「サトシは本当に政治的な理由でそれをやっているという印象を受けました。彼は私たちが今使っている金融システムが好きではなく、もっと平等な別のシステムを望んでいました。彼は、銀行や銀行家が鍵を持っているという理由だけで裕福になるという現行のシステムを好まなかった」とアンドレセンは言います。

2011年4月26日にサトシが電子メールでアンドレセンに「私のことを神秘な影の人物だといわないでほしい」と書きました。「それによってマスコミはビットコインを海賊通貨のように扱っています。代わりに、オープンソースプロジェクトについて説明し、開発者たちの貢献をもっと賞賛し、それは彼らのやる気を引き出すのに役立ちます。」

アンドレセンは、「うん、マスコミの『奇抜な海賊のお金』の口調は僕もうんざりしている」と返信しました。その後、サトシからメールが来なくなりました。


サトシ・ナカモトだと推測された人たち


以下の人物が本物のサトシ・ナカモトとして推測されましたが、彼であることが確実に証明された人はまだいません。

ドリアン・ナカモト(Dorian Nakamoto)

ドリアン・ナカモトは、2014年3月のニューズウィークの記事でリア・マグラース・グッドマンによってビットコインの作成者として指名されたカリフォルニアの学者およびエンジニアです。マクグラスの記事によると、「ニューズウィークによる調査では、64歳の日系アメリカ人男性で、その名前は実際にはサトシ・ナカモトである」と書かれていますが、その後P2P財団にサトシ自身のアカウントに3年ぶりのメッセージが投稿され、「私はドリアン・ナカモトではない」と述べた。しかしサトシ・ナカモトのメールアドレスが不正利用の疑いもあったため、本人の投稿かどうかは不明です。

ハル・フィニー(Hal Finney)

ビットコインはサイファーパンク(cypherpunk: 強力な暗号技術の広範囲な利用を推進する活動家という意味)運動の産物であり、その運動の柱となる一人はハル・フィニーでした。フィニーはビットコイン誕生の前後にビットコインコミュニティで活動していました。そして2014年に亡くなりました。フィニーは世界最初のビットコイントランザクションでサトシからビットコインを受け取ったのです。彼は偶然にもドリアン・ナカモトから数ブロック離れている所に住んでいて、フィニーはもしサトシなら、サトシという仮名はドリアンからのヒントだったのかもしれないと推測されています。

ニック・サボ(Nick Szabo)

フィニーのように、サボは初期のサイファーパンクであり、そのサークルの多くは友達でした。 1998年に、彼は第三者の信用に依存しない「ビットゴールド」と呼ばれるデジタル通貨を考案しましたが、それを実際に実装していません。2008年にサトシのビットコインの論文発表の少し前に、サボはビットゴールドを実装しようとブログに投稿しました。ビットゴールドはビットコインの前身と考えられ、サトシの正体もサボではないかと名前が挙げられました。

クレイグ・ライト(Craig Wright)

サトシ・ナカモトの正体としてノミネートされている最もカラフルな人物の1人、オーストラリアの学者でありビジネスマンでもあります。 WiredのGizmodo記事では、ライトがビットコインの背後にいる人物である可能性を示唆していますが、その後の調査では、彼が手の込んだデマだと結論付けています。しかし、彼は未だに自分がビットコインの発明者サトシであることを主張しています。

ライト以前の同僚で、すでに亡くなったクレイマンの遺族はそのライトの主張が事実なら、共同でビットコインをマイニングしたにも関わらず、ライトが全ての報酬を着服したと主張し、2018年にライトを被告として訴訟を起こしました。
2021年12月6日、米国マイアミの裁判所でその判決が下され、ライトに1億ドルの支払いが命ぜられました。クレイマンの遺族が要求した数十億ドルよりはるかに小さい金額で、その判決がライトの勝利という結果になりましたが、同時に彼がサトシではないという結果とも解釈できます。

ビットコインに特化した雑誌『Citadel21』の編集を担当するビットコイナー、マグナス・グラナス(Magnus Granath)氏(別名:Hodlonaut)は2019年3月に一連のツイートでライト氏を「詐欺師」と批判しました。ライト氏はそれを名誉毀損と非難しました。2022年9月、グラナス氏はライト氏を相手取って訴訟を起こしました。

ノルウェーの裁判所は2022年10月20日、グラナス氏側を勝訴とする判決を下しました。ライト氏はグラナス氏に383,000米ドルの賠償を支払うように命じられました。裁判長は、「グラナス氏が2019年3月に、クレイグ・ライト氏がサトシ・ナカモトではないと主張するのに十分な事実に基づく根拠を持っていた」と判断しました。

金子 勇

P2Pのファイル共有ソフト「Winny」の開発者である。彼は2013年7月6日に急性心筋梗塞のため、42歳という若さで亡くなりました。

ブロックチェーンの専門家であり起業家の仲津正朗は、金子勇がサトシの正体であると仮説を唱えた。この仮説は2019年秋にインターネット上で広まっていました。その根拠として仲津は、議論を起こすこと自体を狙い、金子と交流のあった技術者らの理論との関連性、P2Pの技術的仕組みの共通性、論文に読み取れる「既存システムへの不信感」(金子がWinny事件で著作権法違反幇助の罪を着せられた)を挙げています。さらに、金子がすでに死亡していることによって、サトシが保有しているとされる100万ビットコインが一度も使用されていないことに説明がつくという考えです。

しかし、それらは確たる証拠ではありません。


ビットコインのブロックチェーンからの手がかり


ブロックチェーンの分析は、どのアドレスが比較的高い確率でサトシのものであるかを推測できます。 RSKラボのチーフサイエンティストであるSergioDemiánLernerのチェーン分析によると、サトシは約100万ビットコインを持っています。これらのアドレスは、2009年ビットコインの始まりまでさかのぼります。

この約100万枚のビットコインは彼がその早期のマイニングによって、大量のビットコインを報酬としてもらったと考えられており、現在ビットコインの価格で換算すると、約500億ドルを超えると推定されています。マイニングによる発行されるビットコインの最大可能数が2100万枚であることを考えると、ビットコインの総保有量の5%を占めるサトシの所有量はかなりの市場影響力を持っています。

いままで、いくつかの非常に初期のアドレスからのビットコインが移動される度に、多くの人はそれがサトシであるかを推測していました。これまでのところ、ブロックチェーンの分析では、これらのトランザクションがサトシのアドレスからのものではない可能性が高く、サトシが所有しているビットコインはいまだに彼のビットコインウォレットで保管され続けており、ほとんど送付や取引などは行われていないと考えられます。

2020年5月21日、さまざまなブロックチェーンを監視し、大規模なトランザクションを報告するツイッターアカウント@whale_alertが次のようにツイートしました:

40 #BTC(391,055 USD)は、サトシ所有可能性のあるウォレット(2009年以降休止)から不明なウォレットに転送されました。このトランザクションのコインは、ビットコイン誕生の最初の月に採掘されました。

これはすぐにツイッター全体に波紋を起こしました。その後、ブロックチェーン上の情報ではこれがサトシ以外の誰かであることを示していましたが、多くのツイッターユーザーはまだこれがサトシだと思い、サトシが保有しているビットコインを手放すのではないかと不安を感じ始めたようです。恐れと不安がツイッターのコメントセクションを埋め、売るべきかどうかを尋ねる人もいれば、すぐに売るだろうと言う人もいました。その中に冷静で、仮にサトシがビットコインを移動したり販売してもビットコイン全体として気にすることではないと主張する人もいました。

それにしても、このニュースが出た後にビットコインの価格はすぐに4%下がり、このように確認されていないニュースや事実でない場合でも、仮想通貨の取引市場を揺るがすことがいかに簡単であることをもう一度証明されました。また、ビットコインが分散化されていて、一人のリーダーや中央管理機構がないとしても、彼1人の動きが仮想通貨市場をいかに影響できることも示されました。


サトシの正体について筆者の見解


筆者がこの記事を書くために、インターネット上で沢山な情報を集め、自分の分析と推理で、サトシの正体として、可能性の一番高い人物はハル・フィニーだと思います。ドリアン・ナカモトの近くに住んでいますから、おそらくドリアンのことを知った上でサトシ・ナカモトという仮名を使用した可能性が高いです。また、ドリアンがサトシだとマスコミが報道した直後に、サトシのメールアカウントから「私はドリアン・ナカモトではない」と声明を出したのは、もしかしてドリアンの名前を借りて、ドリアンに迷惑をかけたと思い、わざわざその声明を出したのかも知れません。

またハルは世界最初のビットコイン送金でサトシからビットコインを貰ったのは、サトシがビットコインの送金をテストしようと、自分宛に送付したのかも知れません。テストするつもりで、他人に送付するより、自分に送ったでしょうか。さらにハルが麻痺の病気の悪化で2014年に死去したことは、サトシの所有しているビットコインアカウントがずっと休眠していることにも説明できます。麻痺による健康面の原因で、サトシが2010年にビットコイン活動から引退したのかも知れません。

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