仮想通貨大国アメリカ

仮想通貨大国アメリカ

2021年11月作成

2021年9月7日、中南米のエルサルバドル共和国は世界初、ビットコインを法定通貨として採用しました。しかし、エルサルバドルは発展途上国でインターネットのアクセスを持たない人口もあり、ビットコインの普及率はまだ世界一ではないです。 世界で仮想通貨一番普及している国は実はスロベニアで、2019年の初めにも、仮想通貨だけで生活できる世界で唯一の国となりました。

それでも、世界一の仮想通貨大国と言えば、エルサルバドルではなく、スロベニアでもなく、アメリカにほかなりません。アメリカは多様な面で仮想通貨における世界的リーダーであり続けています。

アイルランドの新興フィンテック企業Coincubが2022年7月に発表した2022年第2四半期の「Global Crypto Ranking」(世界仮想通貨ランキング)によると、米国とドイツは同点で一位タイになりました。Coincubは、政府の政策、金融サービス、普及人口、税制、人材育成、業界参加者、取引、詐欺、環境ポテンシャルという9つのカテゴリーでポイントを集計し、ランキングを算出しています。

仮想通貨を容認するアメリカ政府

中国政府による仮想通貨の全面禁止と対照的に、アメリカ政府は仮想通貨に対して容認の態度を取っています。

米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は2021年9月、米議会の前で、仮想通貨擁護派のテッド・バッド下院議員からの仮想通貨関連の質問に、ビットコインや仮想通貨を非合法化する計画がないと述べました。

米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長も2021年10月、議会の公聴会で、SECが暗号資産(仮想通貨)を禁止することはないと語りました。その公聴会で、テッド・バッド議員から「中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を考慮し、中国のように仮想通貨を禁止する計画はあるか」と聞かれたゲンスラー氏は、「そのような計画はない。禁止するかどうかを決めるのは議会の判断になる」と回答しました。

また、ビットコイン支持派の米国会の議員たちはビットコインや仮想通貨を支持する発言が相次いています。米アリゾナ州の上院議員に立候補しているブレイクマスターズ氏は2021年9月28日、米国政府が暗号資産(仮想通貨)ビットコインを戦略的に保有するべきだと主張しました。

先週、中国は仮想通貨を禁止した、我々はその反対のことをしよう。米政府はビットコインを戦略的な蓄えとして購入すべきだ。

中国の仮想通貨禁止令を米国のチャンスとして見る者は、 マスターズ氏以外にも存在していました。共和党のパット・トゥーミー上院議員は2021年9月24日、次のようにツイートしました。

中国のビットコインなど仮想通貨に対する権威主義的な取り締まりは、米国にとっての大きなチャンスだ。米国が中国に対して大きな構造的優位性を持っていることを思い出させるものでもある。

テッド・ バッド下院議員は2021年9月、ブロックチェーン技術を歓迎するだけでなく他の国が優位に立つ前に米国が主導権を握るべきと主張し、以下を述べました。

それは新しい技術で、これからも進化するから、シンガポールやエストニア、または私たちに敵対する可能性のある他の国よりも、むしろ米国で進化させたいと思います。

私はむしろ、我々が決めた規制の枠組みのなかでそれが発展し、人々が未来がどうなるかを予期できるように望みたいです。

2020年に駐日大使にも就任した経歴があるビル・ハガティ上院議員は2021年10月28日、銀行委員会の公聴会で、新たに任命された消費者金融保護局長のロヒット・チョプラ氏に対し、「この分野(仮想通貨)でイノベーションを妨げない監督責任を果たすことを確かめたい」と語りました。

「デジタル台帳技術は、金融イノベーション(革新)とインクルージョン(包括的)という面で非常に大きな可能性を秘めています。特に、中国や中国共産党など、その分野での民間活動を禁止する動きがある他の国々を見ると、これは、米国がリードしていた、また現在もリードしている分野で、私たちは米国がリードし続けることを望んでいます。」

アメリカ政府は仮想通貨を禁止するのではなく、慎重に規制をかけながら、仮想通貨を発展させるというスタンスを取っています。アメリカ司法省は2021年10月、仮想通貨の犯罪利用防止へ対策を強化するために仮想通貨専門チームを設立しました。リサ・モナコ司法副長官は、「犯罪者の犯罪収益をロンダリングまたは隠すのを助ける」プラットフォームを摘発することを目的とした仮想通貨専門チームについて以下を述べました。

仮想通貨取引所は、未来の銀行に”なりたい”と考えている。我々は、人々がこれらのシステムを使用する際に安心感を持てるようにする必要があり、また、システムの不正使用を根絶するための態勢を整える必要がある。

バイデン大統領は2022年3月9日、米国初の仮想通貨に関する大統領令(行政命令)に正式に署名しました。大統領令のタイトルには「デジタル資産の責任ある発展の実現」という文言が入り、リスクへしっかりと対応しながら、デジタル資産や基盤技術の潜在的なメリットを活用するというのが米国のアプローチとなります。

大統領令の概要報告書では、仮想通貨を含めたデジタル資産がここ数年で大幅に成長したことに言及し、2021年11月に全体の時価総額が3兆ドル(約347兆円)を超えたことや、米成人の16%(約4,000万人)が仮想通貨を取引・利用していること、100超の国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実験を行なっていることなどを例に挙げ、今回大統領令を出した背景を説明しています。

そして、このようなデジタル資産の台頭は、グローバルな金融システムや技術の開発において、米国がリーダーシップをとるチャンスになると主張し、一方で課題として消費者保護、金融安定性の確保、国家安全保障、気候変動リスクに対応を行うべきだとしました。こういったリスクを抑えながら、民主主義的価値や米国の国際的な競争力のもとで、デジタル資産領域を主導する役割を米国が担うべきだと述べています。

数字で世界をリードするアメリカ

仮想通貨による決済総額

2020年、アメリカのビットコインによる決済総額は、欧州、中国、ナイジェリアを合わせたものを上回り、世界最大となっています。

仮想通貨取引による利益

チェイナリシスのレポートによると、米国の仮想通貨投資家は2021年を通じて世界最大の469億ドルの実現利益を獲得し、2番目の英国(81億ドル)の6倍以上となり、他の国を圧倒しています。3位と4位はドイツと日本でそれぞれ58億ドルと5億ドルとなっています。

米国では2021年に仮想通貨の採用が大幅に進み、仮想通貨価格の上昇で2021年の実現利益は、2020年の81億ドルから476%増加しました。

ビットコイン/仮想通貨ATM設置数

アメリカはまた、ビットコインATMで世界をリードし、2021年10月時点で総設置台数の86.4%を占めています。ビットコインや仮想通貨ATMを設置する動きが活発しています。

2021年10月、アメリカ最大のスーパーマーケット「ウォルマート」はコインスターや仮想通貨取引所コインミーと提携し、全米の店舗に200台のビットコインATMを設置したと発表し、将来に8000台増設の計画も明らかにしました。

仮想通貨の採用を推進している米ノースダコタ州のウィリストン市は2021年11月に、市主導で国際空港に仮想通貨ATMを設置すると正式に発表しました。
ウィリストン市は仮想通貨サービス会社Coin Cloudと提携し、デジタル通貨マシン(DCM)を設置する予定です。同社によると、DCMはユーザーがビットコインだけでなく、現金でイーサリアム(ETH)、ドージコイン(DOGE)、柴犬(SHIB)など40の仮想通貨を売買することを可能にするので、「単なるビットコインATM以上」です。

ウィリストン市の財務長官、ヘラクレス・カミングス氏はこの取り組みが米国で「空港と政府主導の仮想通貨ATMの最初のケースかもしれない」と語りました。

国際空港で仮想通貨ATMを設置することで、世界中の旅行者が現地で仮想通貨を現地通貨に変換し、使い残った現地通貨を仮想通貨に戻すという使い方が想定されます。

仮想通貨マイニングパワー(ハッシュレート)

アメリカは現在、世界最大の仮想通貨マイニングパワーを持っています。中国による仮想通貨の取り締まりで、かつて全世界60%以上のマイニングパワーを持つ中国は1位の座をアメリカに渡しました。

2021年5月に中国の仮想通貨規制強化を受け、多くのマイニング企業はアメリカに拠点を置くようになりました。アメリカのマイニング企業が2021年第3四半期におけるビットコイン採掘量を報告した結果、第2四半期に比べ、採掘能力は82%向上しました。

ビットコインのマイニングデータは、米国内の4つの州(ニューヨーク、ケンタッキー、ジョージア、テキサス)がビットコインのハッシュレート分布が最も高いということを示しています。

Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Index(CBECI)の2021年8月1日付のデータによると、米国のビットコインマイナーは世界のハッシュレートの35.4%を占め、2021年4月時点の16.8%のシェアの2倍以上に増えました。カザフスタン(18%)とロシア(11%)が2位と3位に続きます。この3カ国は、中国のビットコインマイニング禁止令を受けて、大きな市場シェアを獲得したようです。

さらに、デジタル資産投資会社CoinSharesの調査レポートでは、2021年12月31日時点で、世界のハッシュレート全体の推定49%が米国にあると示しています。

CBECIのデータでは中国からのハッシュレートは7月から0%になりました。

仮想通貨保有量

アメリカは仮想通貨保有量でも世界一位になっています。アメリカの世帯全体で、仮想通貨の時価総額の3分の1相当を保有しているという概算が出ています。

世界最大の仮想通貨投資信託会社グレースケール・ビットコイン・トラスト(Grayscale Bitcoin Trust – GBTC はアメリカのニューヨークに本社を置き、2021年11月現在366億ドル(約4.2兆円)の資産を管理しています。GBTCはビットコインと連動するオープンエンド型私募投資信託で、投資家がビットコインを直接購入、保管することなく、伝統的な有価証券の形でビットコインへの投資を可能にし、ビットコインの取引コストを減らすことにもなります。GBTCは投資対象をビットコインに特化した世界初の有価証券です。

アメリカ企業もインフレーション・ヘッジとしてビットコインや仮想通貨を保有するような動きが活発しています。企業によるビットコインの保有量で上位5社は全部アメリカの会社となっています。

MicroStrategy

ビジネスインテリジェンス企業MicroStrategy社はマイケル・セイラー最高経営責任者(CEO)が主導でビットコインを購入し続けていました。セイラー氏は2021年9月に、「9月12日時点で、1ビットコイン平均27,713ドルで114,042ビットコインを約31億6,000万ドルで取得し、保有している。」とツイートしました。
2021年11月現在では1ビットコインは6万ドル超えており、すでに30億ドル以上の利益が出ています。

2021年11月29日、MicroStrategy社がまた1ビットコイン当たり平均59,187ドルで7,002ビットコインを購入したと発表しました。発表によると、10月1日から11月29日の間に自社株571,001株を売却して合計4億1,440万ドルの資金を今回の購入のために調達しました。

2021年12月9日、米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、マイクロストラテジー社は11月29日から12月8日の間に1,434ビットコインを約8,240万ドル(平均価格57,477ドル)で購入し、保有総額は122,478BTCとなりました。今回の購入により、マイクロストラテジーの保有資産は59億ドル以上となり、22億ドル以上の利益となっています。

2021年12月30日、米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、マイクロストラテジー社は12月9日~29日の間に9420万ドルで1914BTCを購入し、同社が保有するビットコインの総額は12万4391BTCとなりました。これはビットコインの最大発行量2100万BTCの0.592%にもなり、企業によるビットコインの保有量が世界最大です。これまでマイクロストラテジー社は37億ドル以上のビットコインを購入し、同社の現金に加え、機関投資家に同社の社債の私募で購入資金を確保しました。同社が保有するビットコインの価値は約59億ドルとなり、21億ドル以上の利益をあげています。

2022年2月1日、米証券取引委員会(SEC)に提出された報告書によると、マイクロストラテジー社は2021年12月30日から2022年1月31日の間に現金約2500万ドルで660BTCを購入しました。購入時の平均BTC価格は、手数料や経費を含めて1BTCあたり37,865ドルに上りました。
1月31日時点で保有額は合計125,051BTCで約37億8000万ドル相当、手数料や経費を含めた平均購入価格は1BTCあたり約30,200ドルとなっています。

2022年4月5日、マイクロストラテジー社はまた4,167 BTCを約1億9,050万ドルで購入したと発表しました。同社のビットコイン保有量は129,218BTCとなり、依然として保有量で世界最大の企業です。購入は2月15日から4月4日の間に平均価格45,714ドルで行われました。その前に3月29日の発表によれば、マイクロストラテジー社は保有しているビットコインを担保としてシルバーゲート銀行から約250億円(2億500万ドル)のローンを調達し、ビットコイン購入の資金に充てると計画していました。

2022年6月29日、米国証券取引委員会(SEC)に提出した報告資料によると、マイクロストラテジー社はまた480BTCを平均価格2万817ドルで購入しました。購入総額は現金で1000万ドルでした。今回の購入により、マイクロストラテジー社のビットコイン保有量は12万9699BTCとなりました。

同社の資産はあまりにもビットコインの割合が高いので、同社の株価総額は所有しているビットコインの価値とほぼ同額になっています。

2022年9月9日、マイクロストラテジー社はビットコインを購入するために、クラスA普通株式を売却し、5億ドルを調達することがSECへの提出資料から明らかになりました。9月20日、マイケル・セイラー会長はツイッターで、同社は平均価格19,851ドルで301ビットコインを追加購入し、総保有量が130,000ビットコインになったと発表しました。マイクロストラテジー社は現在採掘された全ビットコインの0.62%を所有しており、上場企業としては最多の保有量となっています。

2022年12月28日、マイクロストラテジー社は、米証券取引委員会(SEC)に提出した報告書類(FORM 8-K)によると、11月1日から12月21日の間に、平均価格1万7181ドルで約2,395BTCを追加購入したと報じられました。12月22日に税金対策のために約704BTCを売却しましたが、24日にまた約810BTCを購入しました。これで、マイクロストラテジー社のビットコイン総保有量は平均取得単価1BTC=3万0,397ドルで13万2,500BTCになりました。

テスラ

イーロン・マスクが率いる電気自動車メーカーのテスラ社は、平均価格34,722ドルで購入した約43,200BTCを所有しています。 2021年11月現在の価値では、テスラは投資に対して1.74倍のリターンを獲得しました。

テスラ社は2021年10月に、米国証券取引委員会(SEC)に提出した最新の四半期報告書で、「将来的には仮想通貨での決済を再開する可能性がある」と述べ、テスラ車の仮想通貨決済の再開を示唆しました。また、価値の保管と決済手段としての暗号資産に対する長期的な信念を表明し、次のように述べました。

我々は、デジタル資産の長期的な可能性を、投資としても、現金の流動的な代替手段としても信じている。

過去にビットコインによるテスラ車決済のニュースは仮想通貨市場に波乱を起こしました。

マスク氏は2021年3月24日、ビットコインでテスラ車の購入が可能になったと表明したことを受け、ビットコインは大きく上昇、4月に史上最高値を更新しました。
しかし、マイニングが環境に悪影響を与えるという判断から、テスラは5月にビットコイン支払を停止しました。それは5月~7月に仮想通貨市場の低迷の引き金になりました。

テスラ社は2022年7月20日に公開した財務報告書によると、2022年第2四半期に保有するビットコインの約75%を売却し、バランスシートに9億3600万ドルの現金を追加したことが明らかになりました。イーロン・マスクCEOは、今回の売却について「ビットコインに対する評価と受け止めるべきではない」と指摘し、中国でのロックダウンが続いたことによる流動性懸念に対応するために現金を確保する一時的な措置と電話会議で説明しました。また「将来的にビットコインの保有量を増やすこと」を示唆しました。

ブロック(旧社名Square)

金融サービスとデジタル決済会社Squareは2020年、1ビットコイン平均27,407ドルの価格で8,000以上のBTCを取得、保有しています。Square社はビットコイン投資に関する文書に以下を記述しました。

「Squareは、仮想通貨が経済の促進の手段であり、世界中の誰にもグローバルな金融システムに参加する方法を提供していると思います。」

2021年12月1日、Squareは会社名をブロック(Block)に変更すると発表しました。これはブロックチェーン技術への移行を意味しているようで、正式な社名変更は12月10日からです。

ブロック社は2021年12月14日のツイートで、モバイルアプリCash Appでユーザーが友人や家族に仮想通貨や株式をギフトとして贈ることができるようになると発表しました。

Cash Appでわずか1ドルの株式またはビットコインを送信できる。現金を送るのと同じくらい簡単で、贈るための株式やビットコインを所有する必要はない

金融機関の対応

仮想通貨の時価総額は2021年11月現在驚異的な3兆ドルに達しているので、それはもはや単なる代替金融システムではなくなっています。ビットコインやアルトコインは価値の上昇が見込める投資資産だけではなく、仮想通貨が主流経済の一部になる機運が高まっています。アメリカのVisaとPayPal社はすでに仮想通貨決済を導入しており、仮想通貨の大量普及を推し進めています。

米伝統金融界では、ゴールド・マンサックスやCitiグループ、モルガン・スタンレー、バンカメなどが相次いで仮想通貨関連の投資商品を顧客に提供し始めました。

ゴールドマン・サックス

大手投資銀行ゴールドマン・サックスは以前仮想通貨に懐疑的なスタンスを持っていましたが、2021年から方向転換し、積極的に仮想通貨関連商品を扱うようになりました。

2021年、ゴールドマン・サックスは仮想通貨業界で歴史的な動きとして、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のデリバティブ(金融派生商品)の取引サービスを開始しました。6月に、仮想通貨投資運用会社ギャラクシー・デジタルの協力でビットコイン先物商品をデリバティブ取引所CMEで上場しました。米国証券取引委員会のデータによると、ゴールドマン・サックスはギャラクシー・デジタルのイーサリアム・ファンドを顧客に提供しています。

2022年3月21日、ゴールドマン・サックスはギャラクシー・デジタルの取引部門と共同で、史上初の店頭(OTC)仮想通貨オプション取引を実行したと発表しました。ゴールドマン・サックスのデジタル資産部門アジア太平洋責任者、マックス・ミントンは、この取引がゴールドマン・サックスのデジタル資産能力と資産クラスの進化として重要なマイルストーンであると述べました。

ゴールドマン・サックスは、ステーブルコインで時価総額2番目に大きいUSDコイン(USDC)を運営するブロックチェーンテクノロジー企業Circleを支援していることも知られています。

ゴールドマン・サックスは2022年3月、公式サイトのトップページの一面に「デジタル化:仮想通貨からメタバースまで、経済を変革するメガトレンドを探る」という特集を載せています。同行は仮想通貨分野に注目する背景には、富裕層による仮想通貨への投資需要の高まりがあるようで、2021年7月にゴールドマン・サックスは、同行サービスを利用するファミリーオフィスのおよそ半数が仮想通貨へのエクスポージャーを求めていることを明かしました。2022年3月24日付けのThe Block報道によると、同行が172の顧客を対象にしたアンケートの結果、全体の60%が今後1~2年に仮想通貨保有量を増やす意向を示しています。

2022年4月28日、ゴールドマン・サックスが仮想通貨ビットコインの担保ローンを提供する予定と報じられました。米国ではすでに米Silvergate銀やコインベース、Figure社なども類似した仮想通貨の担保ローンを提供していますが、ゴールドマン・サックスはそれを提供する初のウォール街の代表的金融機関になります。

Citiグループ

CitiのJane Fraser CEOは2021年10月25日、Yahoo Financeの取材で同社が現在仮想通貨を含むデジタル資産の決済インフラを構築していることを明かしました。

Fraser氏は取材で、デジタル資産の決済について、「デジタル資産が金融サービスと金融市場の一部になるのは、間違いのないことだろう」、「リアルタイム決済の実現が遠い話ではなく、デジタル通貨は我々の未来になりうる」として、「Citiグループは現在、消費者向けのリアルタイム決済インフラを作っている」と話しました。

仮想通貨インフラを構築している中「業界の発展が非常に早く、規制が少ないため慎重に進めている」、また消費者保護について、Fraser氏は「仮想通貨・デジタル資産における規制の不明確性は未だ課題であり、我々は消費者の保護を重視している」と述べました。

Citiグループは仮想通貨の関連事業を積極的に手がける金融大手で、2021年6月に仮想通貨およびブロックチェーンに特化した部門『デジタル資産グループ』を立ち上げ、8月にはCMEが提供するビットコイン先物の取引をクライアントに提供する可能性が報じられていました。

モルガン・スタンレー

米国の大手投資銀行であるモルガン・スタンレーの投資ファンドが、グレイスケールのビットコインファンド(GBTC)の株式を買い増すことで、ビットコインへのエクスポージャーを増やしていると報じられました。

モルガン・スタンレーは2021年9月、仮想通貨に特化した調査部門を新設しました。仮想通貨専門調査チームの立ち上げは、「世界市場における仮想通貨やその他のデジタル資産の重要性が高まっているためだ」と同社は述べていました。

バンカメ

米メガバンクのバンカメ(Bank of America)は2021年10月4日、デジタル資産のリサーチを開始したことを正式に発表しました。

リサーチの対象は「仮想通貨」だけでなく「デジタル資産」と広く定義しており、発表によると、ステーブルコインやNFT(非代替性トークン)、中央銀行デジタル通貨(CBDC)などについても、様々な視点から情報を提供すると説明しています。

今回の発表でバンカメは「デジタル資産の市場規模は2兆ドル(約220兆円)に達しており、ユーザー数は2億人に上る」と指摘し、市場が無視できない規模になっていると説明しました。

デジタル資産のエコシステムが拡大し、市場に参加する個人投資家が増加するにつれて、規制当局の目が厳しくなっている。これは、規制が整備されていない『西部開拓時代』と呼ばれる状況が、終了に一歩近づいた可能性がある。

その上で、「規制が整備されれば、将来的により多くの企業がデジタル資産を購入したり、デジタル資産のエコシステムに参加したりするかもしれない」との見方も示しています。

U.S.バンク

米国第5位のリテール銀行であるU.S.バンクは2021年10月、機関投資家向けに仮想通貨カストディサービスを開始すると発表しました。
このサービスを提供する米大手金融機関としては、U.S.バンクのほかに、ステートストリート銀、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)、ノーザントラストが計画を発表しています。

カストディサービスとは、顧客の代わりに有価証券の管理を行うサービスのことで、主に銀行や信託銀行といった金融機関が提供しています。具体的なカストディサービスの例として、口座管理や取引決済、配当金と利息の支払いの回収、税務サポート、外国為替管理などが挙げられます。

従来の有価証券を対象としたものとは別に、近年では仮想通貨を対象としたカストディサービスも増加しています。その主な用途は資産の保護です。送金や保有している資産へのアクセスに必要な秘密鍵は、盗まれたりハッキングされたりする可能性があるため、仮想通貨を対象にしたカストディサービスでは、秘密鍵を安全に保管することが最重要項目です。

JPモルガン

米国大手銀行JPモルガンは何年前からブロックチェーンや仮想通貨関連の事業を模索してきました。2022年11月初め、JPモルガンは、DBS銀行とSBIデジタルアセットと、銀行業界で初のブロックチェーンを利用したDeFi(分散型金融)取引を実施しました。トークン化された国債の取引や、トークン化された日本円とシンガポールドルを使用した外国為替取引が実行されました。

2022年11月、JPモルガンは、JPモルガンウォレットというデジタル資産ウォレットの商標を米国商標特許庁(USTPO)に申請しました。提出された申請書によると、JPモルガンウォレットの目的は、デジタル通貨交換を容易にすることです。

USPTOによると、商標は2022年11月15日に正式に登録されました。

CME

米国大手デリバティブ取引所シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が2021年前半、ビットコイン先物の建玉ランキングで第2位に躍り出ました。

デリバティブ調査会社スキュー(Skew)によると、CMEは2021年10月、ビットコイン先物の建玉総額179億ドル(約2兆円)のうち17%近くの30億ドルを占めています。

伝統的な取引所が市場の主役になるのはビットコインが普通の投資資産として認められることで、意義深いです。

ビットコイン先物ETFへの需要が高いため、CMEは2021年10月後半、大手仮想通貨取引所バイナンスのビットコイン先物の建玉(OI)を超えて、最大のビットコイン先物取引所になりました。Skewの2021年10月後半のデータによると、CMEのOIが6,450億円で、バイナンスは6,430億円となっていました。

CMEの建玉急増はProShares及び2021年10月に新たに上場したValkyrieのビットコイン先物ETFへの需要が背景にあるようです。

CMEは2021年2月にイーサリアム先物取引も開始し、最小ロットが50ETHで、主に大口投資家や機関投資家を運用対象としています。さらに2021年12月6日、CMEはマイクロイーサリアム(ETH)先物取引を正式に開始しました。「マイクロイーサリアム先物」は、個人投資家でもアクセスしやすいように先物の最小ロットを「1/10のETH」とした商品です。

CMEは2022年3月28日、仮想通貨ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のマイクロオプション取引の提供を開始しました。マイクロオプションとは、個人投資家でもアクセスしやすいようにオプションの最小ロットを通常のオプションの1/10とするものです。また、提供するマイクロオプション取引には、ウィークリーオプションとマンスリーオプションの2つの取引があります。CMEは2020年1月にビットコインのオプション取引を初めてローンチしました。一方、イーサリアムオプションに関しては、通常サイズのものがなく、今回が初のオプション取引提供となりました。

CMEは2022年8月18日、仮想通貨イーサリアム(ETH)のオプション取引を提供する予定と発表しました。今回は通常サイズで機関投資家向けの商品で、オプションの行使には同社が提供するETH先物契約で決済され、最小ロットは50ETH(約1,270万円)と設定されています。

イーサリアムの大型アップグレード「マージ」は2022年9月15日に起こると予想され、イーサ関連の取引高がかなり大きくなる可能性があります。CMEはこのオプション取引をその「マージ」の直前の9月12日から提供開始する予定で、同社の株式・外国為替商品部門グローバル責任者Tim McCourt氏は「待望のマージアップグレードが来月に迫る中、市場参加者はイーサの価格リスクを管理するためにCMEの商品を利用し続けている」と述べました。

マスターカード

決済大手の米マスターカード(Mastercard)は、2021年4月に仮想通貨取引所のジェミニ(Gemini)と提携してコミュニティ限定の仮想通貨クレジットカードを米国で発行しました。このカードで、消費者がビットコインやその他の仮想通貨を各国の法定通貨に変換し、決済に使用できます。

マスターカードは2021年11月9日、香港のアンバーグループ(Amber Group)、タイのビットカブ(Bitkub)、オーストラリアのコインジャー(CoinJar)との提携を発表し、アジア太平洋地域の消費者や企業は、仮想通貨連動型のマスターカードのクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードを用いて、仮想通貨を法定通貨に即座に変換し、マスターカードの提携先で使用することが可能になります。

マスターカードは2022年10月17日、仮想通貨関連した新たなプログラム「クリプトソース(Crypto Source)」を発表しました。発表によるとこのプログラムによりマスターカードと提携する金融機関は、顧客に対し仮想通貨関連サービスを提供できるようになります。スターカードは米パクソス(Paxos Trust Company)と提携し、金融機関に仮想通貨カストディ(保管/管理)および取引サービス、デビットカードによる決済サービスなどを提供し、2022年第4四半期に開始する予定です。マスターカード独自の「Crypto Secure」ソリューションも提供し、安全性を向上させます。

マスターカードのデジタル資産部門の幹部によると、マスターカードは仮想通貨エコシステムを構築、提供し、利便性と安全性を向上させ、将来仮想通貨が金融システムの主流になると期待しています。

PIMCO

債券運用会社のPIMCOは2021年10月、さまざまなヘッジファンドのポートフォリオを通じて、「仮想通貨連動証券」へのエクスポージャーを持っていることを明らかにし、 ビットコインなどの仮想通貨へのエクスポージャーを増やすことを計画していると発表し ました。

PIMCOはアメリカのカリフォルニア州に本社を置き、1971年に設立された債券投資に特化した世界最大級の資産運用会社です。同社の運用資産は、2020年12月31日時点で2.2兆ドルに達しています。

年金基金

米国の州・自治体運用の年金基金は併せて約630兆円にも上り、中で仮想通貨へのエクスポージャーを持つ基金は増えつつあります。

例えば2021年9月に、米バージニア州2つの大手公的年金基金は仮想通貨へのエクスポージャー増加を計画していることが報道されました。

米テキサス州ヒューストンの消防士年金基金が2021年10月、ポートフォリオの一部を仮想通貨に割り当てたと報じられました。

ニューストン消防士退職年金基金は、ニューヨークデジタルインベストメントグループ(NYDIG)を通じて、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を2500万ドル分購入しました。テキサス州の記録によれば、2020年6月時点でこの年金基金は純資産で41億ドル以上を保有しており、ポートフォリオ全体の約0.6%をデジタル資産に割り当てたことになります。

年金基金の最高投資責任者であるアジット・シン氏は、仮想通貨が「もはや私たちが無視できない資産クラスになった」と語っていました。

中小銀行

米紙American Bankerは2022年1月18日、米国にある約300の中小銀行が2022年の上半期内にビットコインの取引を顧客に提供する予定と報じました。

2021年から中小銀行がビットコインの関連サービスを提供すると予測されていました。数ヶ月にわたって規制や安全性における課題が解決されたので、2022年前半にサービス開始に向けて、米国の大手仮想通貨投資企業NYDIGと提携して進めています。

NYDIGの親会社Stone RidgeのYan Zhao共同設立者は以前、米Forbesの取材で次を述べました。

我々が進めているのは、一般のアメリカ人や企業が、今使っている銀行との付き合いを通じてビットコインを直接購入できるようにすることだ。

その第一弾として、米ニューヨークを主なサービス拠点として展開する銀行「Five Star」は2022年1月25日、NYDIGと提携し、顧客にビットコインの売買・保管サービスを提供することを発表しました。ビットコイン取引サービスを提供する米国初の銀行になります。顧客が銀行アプリで当座預金口座を利用しビットコインを取引できるようになります。

Five Star銀のMartin K. Birmingham CEOは発表で次のようにコメントしました。

これから、伝統金融資産とともに、ビットコインの売買・管理ができるデジタルバンキング業務を顧客に提供することにワクワクだ。

地方政府の動き

ワイオミング州

ワイオミング州は、仮想通貨やブロックチェーンに友好的な州として知られています。仮想通貨やブロックチェーンに関する法律を整備することで、ブロックチェーン技術での町おこしを目指しています。
2018年以降、ワイオミング州の州議会は、企業や銀行が仮想通貨を使用して営業、取引することを可能にするいくつかの法律を可決しました。因みに2019年1月31日に仮想通貨が金銭として認識されることを認める法案を可決しました。

2021年6月、仮想通貨のカストディサービスなどを提供する企業Wyoming Deposit & Transfer(WDT)が、州当局よりデジタル銀行設立の認可を受けました。この認可によりWDTは、商業銀行の業務と同時に、様々なトークン化された資産や仮想通貨・法定通貨のカストディサービスを提供できるようになります。

テキサス州

テキサス州は2021年9月1日より仮想通貨法案2つを施行しました。

法案HB4474
仮想通貨を商法(UCC)の中に商業取引での有効性を認める内容。例えば、ローンの担保として仮想通貨が認められます。

法案HB1576
ブロックチェーン業界を調査する作業部会(ワーキンググループ)の設立を求める内容です。
日本列島の約1.9倍に及ぶ広大な面積と安価な電気代が特長の米テキサス州は、マイニング事業者の取り込みに積極的です。

両法案を署名したテキサス州のGreg Abbott知事は、今年6月、テキサス州の大手スーパーチェーンHEBが仮想通貨決済を導入するという報道に対し、「テキサスは仮想通貨領域のリーダーになる」と抱負を述べていました。

仮想通貨を商法上認めるのは、テキサス州が米国でワイオミング州、ロードアイランド州、ネブラスカ州に次ぐ第4の州となります。

2022年1月21日、州知事選立候補のDon Huffine氏sは、ビットコインを州内で法定通貨として認めるなど、友好的な法整備を進めていく政策を発表しました。以下の規制案を導入していく方針を明かしています。

  • ビットコイン・仮想通貨政策委員会の設立
  • ビットコインの法定通貨化検討
  • より強固で信頼性の強い電力網の構築およびマイニングにおけるフレアガス利用の促進
  • 州政府のビットコイン保有および市民の保有・採掘・取引の障壁を無くす
  • テキサス州内のビットコイン・仮想通貨保有者およびマイナーを連邦政府から保護
  • 地元当局のビットコイン・マイナー及び保有者の取り締まりを禁止

ビットコイン政策についてHuffines氏は以下のようにコメントしました。

私は何年もビットコインを保有しており、その価値観と資産クラスとしての価値、そして通貨としての将来性を強く信じている。
イノベーションにおけるリーダーとして、テキサスはビットコイン政策と仮想通貨の採択の面でこの国を主導していくべきだ。

Huffines氏が立候補している州知事選は22年11月8日を予定しています。

フロリダ州

米フロリダ州のロン・デサンティス知事は2021年12月9日、2022年度の州予算案を発表しました。その中で「暗号資産(仮想通貨)に優しいフロリダを実現する」という項目を掲げ、仮想通貨やブロックチェーン推進に、70万ドル(約8,000万円)の予算を割り当てています。

予算案は、フロリダ州の企業が州政府に直接、仮想通貨で州の各種料金を支払うサービスを提供するために、州の金融サービス局に20万ドル(約2,300万円)を配分することを提案しています。

予算案には「フロリダ州は、商取引の手段として仮想通貨を奨励し、 企業に対する魅力と経済成長をさらに高めていく」と書かれています。

フロリダ州はマイアミ市を中心に仮想通貨普及を積極的に進めています。米国の中でも仮想通貨友好的な地区として注目されています。

2021年8月に、マイアミ市は世界初のシティコイン「マイアミコイン」(MIA)プロジェクトをスタートしました。それから3ヶ月で、マイアミ市はMIAで2,100万ドル以上の収益を上げています。

CityCoins(シティコイン)とは

シティコインは、仮想通貨スタックス(STX)のプロトコルを用いて、地域(地方自治体)を応援・支援するために発行されたトークン。参加者(マイナー)はSTXをステーキング(預けること)し、その額に応じて、地域コインを受け取れる仕組み。自治体は所有するウォレットから収益の一部を市民に配布することができる。

市は「非発行体」であり、公的な提携などの関係性はない。拡散の仕組みがポンジ・スキームに近いとして懐疑的な声もある。

2021年11月に再選されたマイアミ市フランシス・スアレス市長はマイアミコインから生み出された収益を年率換算すると、マイアミの年間税収4億ドルの約5分の1に相当すると指摘し、以下を述べました。

マイアミコインからの収益は5倍になれば、理論的には、ある時点で市の税収全体を支払うことができ、市は税金なしで運営される都市になる可能性があり、革命的だと思います。

スアレス市長は、11月に最初の米国議員としてビットコインで給料を受け取り始めました。そのわずか1ヶ月後に、彼の401K(確定拠出年金)の一部をビットコインで受け取る計画を発表しました。

彼はリアルビジョンとのインタビューでビットコインについて以下を語りました。

「良い投資資産だと思います。私はそれが明らかに時間とともに上昇すると思います。私はそれを信じています。」

スアレス市長は、ビットコインの成功が本質的に「オープンソースで操作不可能なシステム」というシステムの信頼性と密接していると述べました。

スアレス市長は2022年2月3日ツイッターで、マイアミ市がマイアミコインのウォレットから525万ドルの払い出しを受けたと発表しました。

マイアミコインから初めての払い出し総額525万ドルを受け取ったことを発表できることをとてもうれしく思います。

これは、私たちの街が、課税ではなく、革新的なプロジェクトと協力することを通じて資金を生み出す歴史的な瞬間です。

この資金の用途について、スアレス市長は、マイアミ市民が普通の家庭年収に見合わない家賃の高騰に直面していると指摘し、市内居住者向けの家賃支援プログラムに充当しようとしています。

ミズーリ州

米ミズーリ州クールバレー市のJayson Stewart市長は2021年10月、約1,500人の全住民に、世帯ごと1,000ドル(11万円)に相当するビットコイン(BTC)を配る準備ができたと述べました。

市民がビットコインを長期的投資手段として富を蓄積することを目的としています。そのため、受け取られたビットコインを短期間で売られないように、付与から5年間ビットコインにアクセスできない仕組みを提案しました。

Stewart市長は、「ビットコインはヒューマニティの将来を考える新たな視点を与えてくれた」、「ビットコインは自由・自己主権といったアメリカ合衆国の理念にあっており、最もアメリカ的だ」と話し、ビットコインを介してクールバレー市を社会的に向上させることに期待を寄せています。

Stewart市長は2021年12月10日、市主導のビットコインのマイニング(採掘)に関心を示す内容をツイッターに投稿しました。

ノースダコタ州

仮想通貨の採用を推進している米ノースダコタ州のウィリストン市は2021年5月に大手仮想通貨決済会社BitPayと提携し、ビットコインのような仮想通貨で公共料金の支払いを開始しました。

また2021年11月に、市主導で国際空港に仮想通貨ATMを設置すると発表しました。

テネシー州

仮想通貨支持派として知られるテネシー州ジャクソン市のScott Conger市長は2021年11月、ビットコインで給与を受け取ると宣言しました。

また2021年12月に現地メディア『Jackson Sun』の報道で、市の職員が給与を仮想通貨に変換できるように進めていることが分かりました。市の職員に給与を仮想通貨に変換できる選択肢を提供する予定です。

仮想通貨への変換をサポートする企業の募集を12月22日から開始し、各企業からの提案を2022年2月までに専門委員会が精査する予定です。
市職員の給与を仮想通貨に変換できる制度が実現すれば、米国初の事例になります。

Conger市長は「今回のシステムが実現すれば、例えばビットコインで代金を支払って欲しいと望む市の請負業者も、代金を仮想通貨に即座に変換できるようになるだろう」とも説明しました。

アリゾナ州

アリゾナ州の上院で2022年1月25日、Wendy Rogers上院議員(共和党)がビットコインを州の法定通貨にする法案を提出しました。州法を修正し、ビットコインを司法決定によって制定され得る法定通貨の一種にすることが目的です。

同法案は25日に最初の提示を経ているが、議事運営委員会による投票はまだ実施されていません。

米国の憲法では州が独自の法定通貨を定めることは認められていないので、実際に提案が実現する可能性が低いですが、このような提案が議会で議論、投票されることによって、ビットコインの認知度向上に繋がります。

アリゾナ州内人口約25万人のチャンドラー市では2022年3月30日、水道などの公共料金の支払いにPayPal経由でビットコイン、イーサリアム、ライトコインを使用することが可能になりました。チャンドラー市は直接仮想通貨を受け入れず、提携の仮想通貨サービスで納められた仮想通貨をすべて法定通貨に変換してから受け取るようになります。

ジョージア州

米南部のジョージア州の下院議員5人は2022年2月14日、ビットコインなど仮想通貨の採掘業社の誘致を目的とした税制優遇の法案(HB 1342)を提出しことが明らかになりました。法案は「商業用デジタル資産(仮想通貨等)のマイニングに関わる電力の販売・使用に対し免税する」という内容です。

同州は複数の採掘業者との契約で、2022年10月までに56,000人がビットコイン採掘業務に就業する見込みです。

ジョージア州では安価な電力が提供されているため、仮想通貨採掘業者が同州で操業するのは相次いでいます。Fortune誌が報じた内容によると、Foundryなどの業者は現在、主にジョージア州の太陽光発電と原子力発電による電力を利用しています。2021年には同州のエネルギー委員会がマイナーが安価かつクリーンなエネルギーへアクセスすることを可能にした経緯があります。

ジョージア州議会は2021年3月に、仮想通貨を含む金融基礎知識を高校学習プログラムに追加するように教育当局に求める法案を可決しました。

ルイジアナ州

2021年6月21日、民主党のジョン・ベル・エドワーズ知事は、金融機関や信託会社が仮想通貨の保管サービスを提供することを許可する法案に署名しました。その前に州議会の両院でこの法案は全会一致で可決されました。

この法案は2021年8月1日に発効し、ルイジアナ州の金融機関が適切なリスク管理とコンプライアンス対策が講じられていれば、仮想通貨の保管サービスを許可します。

ロラド州

コロラド州のジャレッド・ポリス(Jared Polis)知事は2022年9月19日、地元のイベント「Denver Startup Week」で税金の支払いにビットコインの受け入れを発表しました。コロラド州は、税金の支払いにビットコインを受け入れる米国最初の州になりました。ポリス知事は以前から仮想通貨支持者の一人として知られており、2022年2月に「納税や他の州への支払い(免許など)において、消費者の利便性を高めるために、クレジットカードに対応しているように多種類の仮想通貨決済にも対応したい」と話しました。

市民は、仮想通貨を使用して、個々の所得税、事業所得税、売上税および使用税、源泉徴収税、退職税、物品税燃料税を支払うことができます。
当初はPayPal個人アカウントのみが仮想通貨を使用して支払うことができます。仮想通貨で税金を支払う際には、1ドルと支払い金額の1.83%が手数料として請求されます。

アメリカ国民の仮想通貨に対する認知度・支持度

世論調査会社YouGovは2021年9月、米国市民4912人を対象にした調査によると、回答者の11%が米国でビットコインを法定通貨にするべきだという提案を「強く支持」しており、さらに16%が「ある程度支持」しています。併せて、米国民の27%がビットコインを法定通貨化を支持するという結果になりました。

また若い世代の方がビットコインの法定通貨化を支持している割合が多かったです。25~34歳の回答者の場合には44%が支持しています。一方でベビーブーム世代(57~75歳)の場合には、43%がこの提案に強く反対しており、支持しているのは11%に留まりました。

調査結果は、国民の収入によって法定通貨化に対する支持率が変わることもわかりました。

ビットコインの法定通貨化を支持する割合は、年間8万ドル(2021年11月現在で約900万円)以上の収入がある回答者では21%でした。年収4万ドル(約440万円)の回答者では支持は11%で、倍近い差がありました。

ニューズウィーク誌が、2021年9月20日の報道によると、米国の10州で有権者9,700人以上を対象に実施した世論調査で、テキサス州住民の37%が仮想通貨の法定通貨化するための投票法案に賛成し、42%がワイオミング州と同様の仮想通貨法案を支持しました。

2021年時点で約2,900万人の人口を抱えるテキサス州では、概ね1,000万人以上の住民が仮想通貨の導入を支持していることになります。普及に伴って2021年9月時点で、既に2400台程仮想通貨ATMを設置しました。

レビューサイトCrypto Headが2021年9月に実施した調査によると、カリフォルニア州は仮想通貨ATMの普及と州内の人々のデジタル資産への関心の高まりによって、米国で最も仮想通貨に友好的な州として浮上しています。この調査では仮想通貨対応指数を計算するために、 Google検索”ビットコインATMの設置数”、”仮想通貨関連の法案の数”などのデータを使用しています。

カリフォルニア州は仮想通貨対応指数10点満点中5.72点で、ニュージャージー州(5.44)、テキサス州(5.28)、フロリダ州(5.03)、ニューヨーク(4.29)を上回りました。

米インターコンチネンタル取引所(ICE)のデジタル資産関連子会社Bakktは2021年7月、仮想通貨投資の目的や課題について、米国居住者2,000名以上を対象に暗号資産(仮想通貨)に関するアンケート調査を実施した結果は、仮想通貨に投資した目的として最も多かった回答が長期投資(58%)で、短期売買による利益が43%と続きました。

仮想通貨に投資していない投資家が購入に至り、最大の課題となっているのは「ボラティリティの高さ」と「どこから始めたらいいか分からない」でした。また、この調査で若年層の方が仮想通貨に対する関心が深いことがわかりました。

米国仮想通貨投資信託最大手のグレイスケール・インベストメンツが2021年8月中旬にビットコイン投資に関する調査を行いました。対象は25歳から64歳までの1,000人で、投資可能な家計資産(職場の退職金制度や不動産を除く)が10,000ドル以上、世帯収入が50,000ドル以上と限定しました。

2021年12月6日に発表した調査レポートによると、調査対象の米国投資家の4分の1以上(26%)がビットコインを所有していると答えました。さらにビットコインを所有する回答者の55%は今年から仮想通貨への投資を開始したと答えました。2021年は仮想通貨市場に色々波乱があったが、ビットコインが広く認知され、普及が加速する1年でした。

回答者の約80%は、ETF(上場投資信託)を通じてビットコインに投資したいと答えました。ビットコインETFの上場は、ビットコインの普及に重要な役割を果たすことを示しています。

米国市場調査会社シビック・サイエンスが2021年11月に18歳以上の米国人を対象に行われた調査によると、ますます多くの投資家が株式を売却して仮想通貨を購入していいます。従来の株式よりも仮想通貨に投資する可能性が高いと答えた人の数は6月時点で回答者の10%で、11月にはその数字は24%に増加しています。

さらに、金融市場と経済を「非常に詳しく」もしくは「ある程度詳しく」フォローしている層が株式から仮想通貨に切り替える可能性が高いという調査結果が出ています。マーケットを「非常に詳しく」フォローしていると回答した1285人のうち、40%が仮想通貨を購入するために株式を売却したと回答しました。

CNBCが2021年12月発表した調査では、ミレニアル世代の億万長者の大半が仮想通貨に大金で投資し、2022年にも継続するつもりだと分かりました。調査は100万ドル(1.13億円)以上の資産を持つ投資家を対象し、対象者の83%が仮想通貨に投資したことを明らかにしました。

調査回答者の53%が投資資産の50%以上を仮想通貨で保有していると答え、さらに回答者の約3分の1が資産の4分の3以上を仮想通貨に投資しています。

ミレニアル世代とは、アメリカで生まれた言葉で、1981年以降に生まれ、現在20代前半~40歳の世代を指す。

仮想通貨関連企業ボイジャー・デジタル(Voyager Digital)社が2022年1月に公表した第1回年次「仮想通貨動向調査」では、調査に参加した6,000以上の米国人の61%が今年中に仮想通貨を購入する予定と答えました。2021年に仮想通貨への投資を計画していた米国人がわずか27%であるという以前の調査結果と比較して、その割合が大幅に増加しています。

調査参加者の76%は仮想通貨への投資がインフレ・ヘッジになると考えていると回答しました。また、仮想通貨保有者の98%は2022年も仮想通貨を購入すると答えました。

調査によると、性別ごとの仮想通貨の保有率は、男性が30%、女性が15%。一方、2022年に仮想通貨の購入を検討している女性の割合は男性とほぼ同率でとなっています。

筆者の感想

アメリカが現在の裕福な経済大国になったのは、ゴールドも一因となっていました。19世紀にアメリカ西部開拓の時代に、カリフォルニアでゴールドの採掘が盛んになっていました。多くのアメリカ人は採掘でゴールドを獲得し、富を築いていました。また、アメリカ政府は20世紀前半に米ドルの金本位制を維持するために全世界から金を集め、一時期に全世界の金保有量の半分がアメリカ政府の国庫にありました。しかし、1971年ニクソン大統領はドルと金の交換停止を発表し、金本位制を廃止しました。その後、金の価格が大きく上昇し、金保有量最大のアメリカはより豊かになりました。

現在、ビットコインがデジタル・ゴールドと呼ばれ、ビットコインのマイニングはまた19世紀にアメリカ西部開拓と似た状況にあります。アメリカはまたこのデジタル・ゴールドの採掘や保有量で世界最大となっています。ビットコインは2009年に誕生して以来、価格が毎年平均で約2倍上昇してきました。ビットコインの採掘報酬量が約4年毎に半減するという設計になっており、またビットコインのさらなる普及による需要の増加で、大幅な価格上昇はこれからも続くと予想されます。このデジタル・ゴールドでアメリカはまた世界で裕福な経済大国であり続けると想像できます。

実際にビットコインや仮想通貨に早期参入した人たちは大きく利益を上げています。日本でも仮想通貨で”億り人”が輩出しています。

米フォーブスは2021年10月5日、米国の長者番付「フォーブス400」を発表しました。2021年のランキングでは富裕な米国人400人のリストに、仮想通貨(暗号資産)事業を行う者が新たに6人加わりました。 前回からランクインしているリップル社のクリス・ラーセン氏とあわせて、仮想通貨関連の起業家は7人となりました。合計で551億ドル(約6兆円)の資産を持っていると推定されます。このうち225億ドル(約2.5兆円)は、仮想通貨デリバティブ取引所FTXの29歳のCEO、サム・バンクマン・フリード氏が保有しています。

中国による仮想通貨の完全禁止があっても、アメリカの支持があれば、ビットコインが世界中に普及し、価格が大きく上昇すると予想されます。これも保有量が最大のアメリカに取っては好都合です。もしもビットコインが全世界に広く普及し、 エルサルバドルに追随してビットコインを法定通貨にする国がさらに増えれば、世界にビットコイン経済圏が形成すると予想されます。いずれ中国もビットコインを認めざるを得なくなります。

日本はかつて世界最大の仮想通貨取引所Mt.Gox社があり、仮想通貨分野で世界の先頭にたっていましたが、2014年ビットコイン流出事件で、Mt.Gox社は経営破綻しました。その後、日本政府は投資者に非常に不利な仮想通貨税制(記事「世界各国の仮想通貨税金まとめ」を参照)を設けるなど、日本人による仮想通貨の投資は世界他国と比べ、衰えている状況になり、日本は徐々に仮想通貨後進国となっています。ビットコインや仮想通貨の上昇によって、保有量の少ない日本は世界他国と比べ、より貧乏になります。そうならないように、日本政府は早急に税制を改正し、仮想通貨に友好的な環境を作る必要があります。

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